就航10周年をふりかえる「その1:第七回定期演奏会」

大度室内楽団は今年就航10周年を迎え第十回定期演奏会を予定しています。
これを機会に過去のいくつかの演奏会を映像とともに振り返ってみたいと思います。

フライヤー

フライヤー

まず、2014年6月22日に行われた第七回定期演奏会を振り返ります。この演奏会ではそれまでと空気をかえてテーマは「アメリカ」としました。弦楽合奏によるプログレッシブ・ロック「アトム・ハーツ・クラブ組曲第1番」(吉松隆作曲)と「静かな都会」(コープランド作曲)でアメリカの空気を堪能したあと、後半は室内楽編成に編曲したガーシュイン作曲「パリのアメリカ人」、ドビュッシーの木管六重奏とでアメリカ人とパリを(強引に)つないでみました(笑)。前半、後半それぞれから一曲づつお楽しみください。


「アトム・ハーツ・クラブ組曲第1番」
曲目紹介:ガーシュインがクラッシックとジャズの融合を試みてから約70年後に、吉松隆はクラッシックとロックの融合を試みた。この曲は「70年代プログレッシヴ・ロック風の弦楽四重奏曲を」というモルゴーア・カルテットからの依頼で1997年に作曲され、2000年に弦楽合奏用に編曲されている。作曲者本人によると、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)の『タルカス』とイエスの『こわれもの』、そしてピンク・フロイドの『原子心母』というロックの名盤を加えて、鉄腕アトムの10万馬力でシェイクしてできた作品とのこと。EL&Pはムソルグスキー/ラヴェルの『展覧会の絵』をモチーフにしたアルバムで有名だし、イエスの『こわれもの』にはブラームスの交響曲第4番の第3楽章をキーボードで多重録音したものが入っていたりするから、ロックにクラッシックの要素を取り入れたものがプログレという言い方もできるかもしれない。だからなんというか、美味いに決まっているんですよね、このカクテルは。全4楽章で約10分というすっきりとした飲み口です。

 


「パリのアメリカ人」(大度室内楽団版)
曲目紹介: あるうららかな春の朝、アメリカ人旅行者がパリのシャンゼリゼ通りをぶらぶら歩いています。古めかしいタクシーの警笛(オリジナル版では本物のタクシー・ホーンを使います!)が鳴る活気に満ちた街の雰囲気を味わっていた彼は、カフェの前で立ち止まります。中から流行歌「ラ・マシーシュ」が聴こえてきます。
 再び旅行者は歩き始め、セーヌ川を渡りボヘミアンの街に入ります。するとふと、理由もなしにひどいホームシックに襲われ無性に国に帰りたくなります。(トランペットのスローなブルース)
 ここで突然ムードが変わり、明るく陽気なチャールストンが賑やかに鳴り出します。旅行者はちょっとフランスなまりがある別のアメリカ人に出会い(一瞬、音がピタっと無くなる部分)やはりパリは世界一の街だと意気投合して街にくり出そうということになります。(トランペットのスイングジャズ)
 一瞬弦楽器による望郷のブルースが戻ってきますが、それもつかの間、曲は陽気なフィナーレへとなだれ込みます。

 この曲の作曲者は当時アメリカでヒットソングメーカーとして絶頂にあった30歳のジョージ・ガーシュイン。本人による曲解説は前述の通りです。
 今から86年前の1928年にニューヨークのカーネギーホールで初演されたこの曲は、彼の作品としては初めて「ピアノを使用しない」純オーケストラ曲として世に登場しました。というのも、この4年前に作曲された彼の代表的作品でもある「ラプソディー・イン・ブルー」は、なんと当時オーケストラのことを全く知らなかったガーシュインの手ではオーケストレーションが公演に間に合わず、グローフェに編曲してもらっているのです。そしてその翌年には、猛勉強したガーシュイン自身によるオーケストレーションで作品が誕生しますが、それは彼が絶対的に自信のある「ピアノ」が主役の協奏曲でした。
 それから2年。これまでの作品と異なり、仕事としてではなく純粋に自らの意思で作曲したのがこの「パリのアメリカ人」なのです。
 さて、「パリのアメリカ人」はピアノを使用しない作品であると前述しましたが、本日の演奏ではピアノを用いております。というのも、ガーシュインのオリジナル版は管と打楽器の演奏者だけでも30人以上は要する大編成のオーケストラで、このままでは我々のような小規模な室内楽団では演奏することができないのです。そこで今回はその不足分を、万能選手であるピアノで補うことにした「大度室内楽団版」でお楽しみ下さい。ガーシュインが目指した作品を壊さないよう、最小限のアレンジを心がけました。

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